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井波彫刻(南砺市) 仏像彫刻師・藤﨑秀平さん (2018年富山)

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父の背中追いかけ 心打つ作品を

 井波別院瑞泉寺へ続く石畳の道・八日町通りに入ると、あちこちで槌の乾いた音が響く。両脇には木彫りの工房がずらり。職人達がここで230年もの間、芸術品を世に送り出し続けている。

 瑞泉寺の門前町として栄えた南砺市・井波。その象徴である井波彫刻は今年5月、「宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館・井波」として日本遺産に登録された。1本の原木をノミと彫刻刀だけで削る精緻な技法は古くから寺社仏閣彫刻に採用、その後は和風建築の欄間にも取り入れられるようになった。

 もともとは火災で焼失した瑞泉寺の再建へ、京都の彫刻師が井波の宮大工たちへ技術を伝授。これを進化させ、井波彫刻文化の礎を築いた。現在井波には300人近い彫刻師がいる。

 井波彫刻協同組合の理事長を務める藤﨑秀平さん(59歳)は彫刻師40年。17年前に他界した父親の跡を継ぐ2代目だ。「生まれた時から父親の彫る姿を見てきました。自分も何かを創作することに興味が湧き、その時点でサラリーマンの選択肢が頭から消えていました」と話す。

 高校卒業と同時に父親へ弟子入り。「昔の職人は皆そうですが、懇切丁寧には教えてくれません。私の父も、とにかく無口。『見て覚えろ』と背中が語っていたと思います」。そう話す藤﨑さんも父親に似て寡黙な性格。今年は5人の弟子を受け入れているが、作業中はあまり口を挟まない。

 「最近は、子が親の跡を継がないところも多く、継承が難しくなってきています。その代わり、井波彫刻に興味を持って県外から門を叩きに来る若い子が増えています。伝統工芸の裾野を何とか広げていきたい」。

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人の心を映す仏像彫刻

 一般観光客向けに作品の販売を行う工房も多い中、藤﨑さんは店を構えない。「人に見られるのが得意でない」と本人は言うが、専門は仏像。ほとんどが寺院への受注生産となり、概ね3~4年先の納品まで予定が決まっている。長いもので制作期間は1年。これまでで一番サイズの大きなもので4m余の仏像を作ったこともあるそうだ。

 基本的には、材料(木材)の仕入れから、寝かす・乾燥させるといった製材工程、作図、彫刻までを全て1人で行う。木材はケヤキが主流だが、藤﨑さんは木目がやわらかいクスノキを使用することも多いそう。乾燥時に割れやすいため、1~2月に中をくり抜き、空洞にした状態で乾燥させ、8月下旬から彫刻に入る。

 藤﨑さんが彫刻に使うノミの種類は実に400本。最初から揃えたわけではなく、それぞれの作業に必要な道具をオーダーしているうちに、増えてしまったのだという。仕上げにヤスリを使用しないのも井波彫刻の特徴。彫刻刀で薄く、丁寧に表面を磨けば滑らかで丸みのある姿に仕上がる。

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 「経験を重ねると、技術の習熟はもちろんですが、作品全体のバランスに対する感性が研がれます。特に仏像は、表情が難しい。彫っているうちに本人の心境が現れ、顔が似てしまうこともあります」と藤﨑さん。

 手応えのある作品が完成した時には、自分の心も洗われる気持ちになるのだと話した。

 

ねんりんピックしんぶん2018in富山

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