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シルバー産業新聞

どれだけ変わる? 福祉用具のある暮らし (2017年)

Q 体が動かないと外出は難しいのでは?

A 福祉用具を使えば新しい趣味だって出来ます

電動カートで行きたいとき・行きたいところへ

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 脳出血で倒れ、左半身にマヒが残ってしまった松田宏さん(取材当時75歳)。短い距離なら、短下肢装具をつけて歩くこともできたが、長距離の移動には車いすが必要になった。不自由な暮らしかと思いきや、「体がこうなるまでは仕事ばかりの毎日で、趣味を楽しむことも少なかった。今は電動カートのおかげで趣味に勤しみ、毎日楽しく暮らしています」と笑顔を見せる。

 松田さんは電動車いす歴15年の大ベテラン。雨の日以外は毎日、自宅近くの公園へ散歩に出かける。手すり付きの歩行練習ができるスペースで、歩く訓練を行うためだ。15年も通っていると知り合いもでき、仲間同士でのおしゃべりも日課になっている。

 歌の会、古文、懐メロ、習字、教会通い、英会話、絵手紙、コンサート――全て身体が不自由になってから松田さんが始めた趣味だ。中には片道40分かけて電動カートで通うものも。「電動カートのおかげで、人の手を借りずに自分の行きたい時に行きたい所へ行けるんです。なかったらこんなにいろんなことはできないですよ」(松田さん)。

 

Q 何に困っているのかがよくわからない…。

A 暮らしを観察するとヒントが見つかります

1本の手すりが生活を変える

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 「福祉住環境コーディネーター」は医療・福祉・建築の幅広い知識で適切な住宅改修や福祉用具等の提案を行う資格。神奈川県川崎市でデイサービス「さくらの丘」を運営する笠原泰子さんも取得者の1人だ。「介護だけでなく、医療や建築の知識を広くもつことで、利用者の相談を一旦全て受けとめ、そこから各分野の専門職につないでいくことができます」。

 自宅でトイレに行けない人がいると、なぜ行けないのか、または行きたくないのかを観察し、話を聞く。他にも、例えば部屋や廊下の壁をよく観察すると、指紋が集まっている箇所が見つかる。こうしたところへ手すりを取り付け、転倒予防をはかるのだという。

 そんな住環境のノウハウが随所にみられるさくらの丘の建物は、木の素材を生かし、自宅にいるような温もりを与える。同検定試験にも出題された「日照時間」を計算した構造で、夏は涼しく冬は暖かい生活空間を提供する。

 またトイレは一般用に加え、介助スペースを十分にとった「みんなのトイレ」、さらに入浴前に排泄が行えるよう脱衣室にも設置。一般用以外は、トイレ両脇の手すりが跳ね上げ式で、車いすからの移乗が行いやすい。

 脱衣室を2カ所設けているのも特長。入浴を終えた利用者はもう一つの脱衣室へ出るので、入浴待ちの利用者と鉢合わせせず、ゆっくりと身支度ができる。入浴サービスの効率もアップし、午前中には利用者10人全員の入浴が完了する。笠原さんは「住環境の整備は利用者の安心・安全を高めるだけでなく、職員がより効率的に動ける手助けにもなります」と強調した。

 

Q 介護する側へのメリットは?

A 負担も危険も大幅に減らせます

「お母さんが楽になって嬉しい」

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 田中健太さん(30)は脳性マヒによる障がいを抱え、現在は母親やヘルパーの介護を受けながら都内の自宅で暮らしている。楽しみはリフトで車いすに乗り移り、電車で野球観戦やディズニーランドに出かけること。大ファンである読売ジャイアンツの応援のため、今シーズンは6回東京ドームへ足を運んだ。そんな健太さんの生活を支えているのが、昨年11月、健太さんの部屋と浴室に導入したリフトだ。

 以前までは厚手のバスタオルを使い、70kgある健太さんを3人がかりでベッドから車いすやシャワーチェアに移乗させていた。入浴で湯船に入る時にも同じようにバスタオルを使い、母親の孝江さんが湯の張られた浴槽に足を入れて、ようやく入ることができていたという。一度、運んでいた看護師が足を滑らせて、ヒヤリとした場面もあった。

 孝江さんが足を悪くしたことをきっかけに行政に相談したところ、勧められたのがリフト。6畳ほどの広さで、大好きなディズニーや読売ジャイアンツのグッズに囲まれる健太さんの部屋にも問題なく設置でき、移乗や動線に干渉しない。

 「入浴の回数が増えた」「負担が減った」と満足げな孝江さん。それ以上に喜んでいるのは健太さん自身だ。バスタオルで移乗される恐怖心がなくなったのも理由の一つだが、「お母さんが楽になったのが一番嬉しい」のだという。取材中、実際の移乗を見せてもらった。スリングシートを装着し、移乗する間、ふたりは終始笑顔で冗談を交わしていた。

 

Q 見た目がいかにも「介護」って感じはちょっと…。

A 一般商品と同じ見た目で効果抜群のものも

迷っても家族が見つけてくれる魔法の靴

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 認知症の症状の一つである徘徊。少し席を外した間にも外へ出て行ってしまうのではと、昼夜問わず注意を払う家族の負担感は大きい。千葉県に住む山上武雄さん(仮名)もそんな悩みを抱えていた一人。近所の友人宅を訪れようと外出し、道がわからなくなって彷徨(さまよ)うなどする妻の依子さんを見るにつけ、不安を感じつつも、「閉じ込めることはしたくない」と思っていた。

 そんなとき知ったのがGPS付き介護シューズ。外観は普通の靴だが、中敷きの底に小型GPS端末を搭載しており、利用者宅から一定程度離れたときは徘徊発生と現在位置情報を、PCやスマホに送信する。依子さんにはクリスマスプレゼントとして贈ることで、外出時には決まってGPSウォークを履いてもらえるようになった。

 真価を発揮したのは外出先でのこと。武雄さんがトイレに行っている隙に、依子さんは徘徊を開始。通りかかった巡回バスに乗り込み、川間駅で下車。川間駅から電車で柏駅、柏駅で乗り換え、新柏駅から周辺散策。さらに新柏駅から電車で高柳駅に向かい、タクシーに乗り換えて姉の家に向かうが分からず、再度、柏駅へ移動。柏駅から帰宅するために川間駅で下車するところ、間違えて豊四季台駅で下車。その足にはしっかりクリスマスプレゼントの靴を履いていたため、位置情報をつかめ、無事家族と合流できた。

 食事中、武雄さんは事故に巻き込まれることなく、妻を無事に保護できたことを思い、依子さんは何処かわからなくなった時に、ふっと家族が現れたことを思い、お互いに笑顔がこぼれた。

 

福祉用具の日しんぶん2017

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