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介護者の腰痛予防法

労働安全衛生総合研究所 上席研究員

岩切一幸氏

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Q なぜ介護者は腰痛になりやすいのですか?

A それは、介護者が自力で要介護者を抱え上げたり、前屈、中腰、ひねりなどの不自然な姿勢を頻繁にとったりするためです。これらは、腰痛を発生させる最大の要因と考えられています。

 そもそも人の体は、重い物を持ち上げるのに適した構造にはなっていません。体の前方で重い物を抱え上げると、上半身と下半身の繋ぎ目に当たる腰の部分に負担がかかります。その負担が大きく、何度も繰り返されると、筋肉に疲労がたまり痛みが生じてきます。さらに過度の負担が続くと、椎間板ヘルニアなどのように骨に異常をきたすこともあります。

 このような現象は、重い物を抱え上げた時だけではなく、不自然な姿勢を続けることでも生じます。直立姿勢に比べて、20度前屈みになった姿勢での腰椎にかかる圧力は1.5倍にもなると言われています。また、座った姿勢では1.4倍、さらに座位にて前屈みになった姿勢では1.85倍にもなるそうです。重い物を持つことに加え、前屈や座位姿勢を取ることも腰には負担となり、腰痛を引き起こす原因になります。

Q どうすれば腰痛を予防したり、腰の負担を軽減したりできますか?

A 腰痛予防や腰部の負担を軽減するには、できるだけ、人や重量物を抱え上げたり、不自然な姿勢をとったりしないようにします。これらのことは難しい場合もありますが、ちょっとした工夫で改善できることもあります。ここでは、その工夫を大きく4つに分けてご紹介します。

 1つ目は、要介護者の残存機能の活用です。できるだけ要介護者には、自分で動いてもらいます。例えば、取っ手を握ってもらったり、介護者の体にしがみ付いてもらったりします。これは、要介護者の機能維持にも役立ちます。

 2つ目は、福祉用具の利用です。リフトをベッドや浴槽の横に取り付けて利用すると、移乗介助が楽になります。また、スライディングボードの使用も腰部負担の軽減に有用です。肝心なのは、道具を使うことにより、人力での抱え上げをできるだけ減らすということです。

 3つ目は、適切な作業姿勢や動作の徹底です。前屈や中腰姿勢は、膝を着いた姿勢に置き換えます。また、ひねった姿勢は、体ごと向きを変え、正面を向いて作業するようにします。どうしても不自然な姿勢を取らざるを得ない場合には、前屈やひねりの程度を小さくし、壁に手をつく、床やベッドの上に膝を着くなどをして体を支えます。さらに、不自然な姿勢をとる頻度や時間を減らすようにもします。

 4つ目は、作業環境の見直しです。介助する環境に棚や机などがあって狭い場合には、別の場所に移すか、またはキャスターなどを取り付けて移動できるようにします。以上のような工夫をすることで、今の状態より少しでも良くしていくことが大切です。

プロフィール

九州芸術工科大学(現九州大学)大学院博士後期課程修了。博士(工学)。広島市立大学助手を経て、2000年に労働省産業医学総合研究所に入所し、2013年より現職。専門は労働衛生、人間工学

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