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少子高齢化時代に対応する移動支援施策

東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻 教授 鎌田実さん

移動支援施策(鎌田先生写真).jpg1987年東京大学大学院工学系研究科博士修了。1990年東京大学講師。同助教授を経て、2002年教授、2009年高齢社会総合研究機構機構長、2013年より現職。専門は、車両工学、生活支援工学

 

  最近1年間の移動・交通に関する話題について紹介する。

 国レベルの大きな話題としては、交通政策基本法の制定がある。同法の前身の交通基本法は民主党政権時代に検討されたものの審議未了・廃案になった経緯があるが、今回は、2013年の185回臨時国会で可決し、同年12月4日に公布・施行となった。

 この法律は交通に関する理念を記したようなもので、もう少し具体的な交通の姿としては、交通政策基本計画の検討がなされており、今年8月にはその中間とりまとめがなされた。

 そこでは、豊かな国民生活に資する使いやすい交通の実現、成長と繁栄の基盤となる国際・地域間の旅客交通・物流ネットワークの構築、持続可能で安心・安全な交通に向けた基盤づくりといった基本的方針それぞれに対して目標を定めている。特に、少子高齢化や人口減に対する部分は重要で、「コンパクト+ネットワーク」といった理念を掲げている。

 また、2020年に東京オリンピックの招致が決まり、交通の分野でも検討が始まっている。技術的革新として燃料電池バスによるBRT(バスを基盤とした大量輸送システム)の自動運転、バリアフリーのさらなる進展、交通ネットワークのさらなる充実などが期待されている。

 その際も重要な役割を担うと予想されるUDタクシーについては、昨年11月の東京モーターショーで、トヨタ自動車がプロトタイプ車を展示した。ロンドンタクシーにも似たプロポーションで、スライドドアにより横から車いすも乗降するような形態である。

 市販化までには時間がかかりそうであるが、登場が待たれる1台である。一方、先行する日産NV200は、ニューヨークでの採用のほか、ロンドン向けに前面デザインを変えたものも発表された。電気自動車版も用意されるという。国内では現状唯一のUDタクシーとして採用が進むものの、デザインがタクシーに見えずに客から敬遠される面もあるといわれる。

 地域公共交通の厳しさは年々増しており、撤退するところも多い。公設民営や公設民託で再生できている部分もあるが、交通政策基本法を契機に抜本的な体制を変えるとか、思い切ったまちづくり施策で地域を変えていくといったことを考えないと、将来にわたってサステナブル(持続可能)なモビリティ確保は厳しいといえる。最近では、バスの運行を止めて、タクシー券を配布するような事例も出てきている。

 被災地では、三陸鉄道の全線復活が明るい話題である。南北のリアス線を結ぶJR山田線は復旧して三陸鉄道化する方向で協議が進んでいるようだが、鉄路の維持には膨大な費用がかかるので、一時的な観光需要だけでなく、長期的な見通しをたてて沿線自治体の支援なども考えていかないと、厳しい現実を前にして打つ手がなくなってしまう。

 超小型モビリティについては、横浜市や豊田市での大規模社会実験のほか、観光地等での活用が進むが、車種・台数としての伸びはあまり大きくない。トヨタ自動車がi―ROADを一人乗りとして原付ナンバー取得し豊田市でのハーモの1つとして加えた。3輪で後一輪が操舵し、車体傾斜があるというユニークな機構である。

 ベンチャーの例としては、WHILLが予約販売を開始した。当初の試作機はデザイン先行の面もあったが、ユーザ意見をもとにして改良を加え、実用性を高めた形になってきている。価格は安くないが、どのようにユーザに受け入れられるか、今後の展開が期待される。

 昨年の後半から自動運転(自動走行)についての話題がメディアを賑わせた。日産自動車は20年までに発売と発表した後、その技術を部分的に使った車の市販を16年末までに行うと発表した。

 他社でも研究開発は進められており、3社の実験車を首相官邸付近で走らせ、安倍総理が試乗し、日本を世界で最もイノベーションが起こりやすい国にしたいと述べたという。公道実験は、欧米が先行しているが、日本でも、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)というプロジェクトがスタートし、官民連携で自動走行分野へ力を入れていくことになる。

 昨年の本欄でも述べたが、筆者は、地方地域のモビリティ確保に、低速モビリティの活用を目指している。公共交通でカバーできないところを、パーソナルモビリティやゴルフカートのような低速車両を活用するもので、安全安心に走れるようにまちづくりとの連携も必要である。

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