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高齢者の車いすシーティング

日本シーティング・コンサルタント協会理事長

木之瀬 隆氏

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 介護保険ではモジュラー車いすという使う人の身体状況や生活に合わせられるタイプが増えています。特に座位がとれない(座ると頭や体がすぐ崩れる)利用者には、ティルト・リクライニング車いすが使われるようになってきました。国内では高齢者の「寝たきり」や誤嚥性肺炎などが深刻な問題になっていますが、ノルウェーなどのスカンジナビアの国々では在宅ではほとんど「寝たきり」の人はいません。今回はティルト・リクライニング車いすの特徴と使い方について紹介いたします。

Q 車いすシーティングとは何ですか?

 専門的な用語になりますが、「車いすシーティング」とは利用者の車いす上での生活目的に合わせた座位保持を行うことで自立的生活を支援し、二次障害の予防と介護負担の軽減をはかる技術です。もう少し簡単に説明すると、みなさんは自分の靴をはいて歩き、季節やファッションに応じて、好みの靴を履いて生活を楽しんでいます。介護保険で使われる一般の車いすは既製品のために、座位能力や身体の状態により、車いすの選定適合を行う必要があり、合わないと座れないなどの問題が生じます。

Q ティルト・リクライニング車いすとは?

図1.JPG 一般的に身体機能としては、座位を取るのが難しい方や「寝たきり状態」の方は普通型車いすや背中だけ倒れるリクライニング車いすには座ることは難しくなります。車いすの座面が傾く機能をティルト、背中が倒れる機能をリクライニングといいます(図1)。また足部がエレベーションする(ひざ間接を伸ばす)ことで「浮腫」などがある方にも有効です。座面がティルトすることで身体が前方へずれにくくなります。重度障がいのある方がベッド上で食べると誤嚥による誤嚥性肺炎を起こすことがありますが、ティルト・リクライニング車いすのヘッドサポートを合わせることで座って食べることも期待できます。

Q ティルト・リクライニング車いすを実際に使っている人は?

図2.JPG

 例として高齢者施設入所の80歳代後半の女性でアルツハイマー型認知症が進み寝たきり状態で全介助になった方を紹介します。この利用者は歩行不能になってから、急速に関節拘縮が進み、普通型車いすに座ると身体が前方へすべり、頭は後ろにそってしまい、座位が取れない状態になりました(図2)。そこで、施設の理学療法士がシーティング評価を行いティルト・リクライニング車いすを調整・適合したところ座れるようになりました。安定して座れたことで介助の食事も取りやすくなり、むせや誤嚥もほとんどなくなりました。また、苦しそうな表情も少なくなり、にこやかな表情が多くなりました。

 

まとめ

 来たる地域包括ケアシステムに向けて、医療機関、地域包括ケア病棟、地域の福祉用具事業者などが、車いすシーティングに関わることで、「寝たきり」をなくし、利用者の在宅生活が進むことが期待されます。

図引用:これであなたも車いす介助のプロに:木之瀬隆編著、中央法規:2007

プロフィール

作業療法士(1982年)。大学教員を経て現職。研究テーマ:車いすシーティングに関する研究、福祉用具の選定・適合に関する研究。シーティングとリフト活用による介護労働者の負担軽減に関する普及啓発事業など。

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