コラム

多くの職種の参加で自助具は進歩する 岡田英志

多くの職種の参加で自助具は進歩する 岡田英志

 自助具とは身体が不自由な人の日常生活動作を助けより簡単に、より便利に暮らせるよう工夫された道具といえましょう。そしてその人個々の障がいにマッチするよう工夫が必要です。自助具は一度作ったら終わりと言うのではなく、障がいの進行度や生活環境、希望に合わせ、より使いやすく改良していくことも大切です。

ヒューマンユニバーサルデザインオフィス 代表 岡田英志氏

プロフィール
 松下電器でデザイン関連部門から福祉のモノづくりを志し、退社後93年から現在の「大肢協・自助具の部屋」に参加。現在日本リハビリテーション工学「自助具支部」の創設に努力している。大阪産業大学、神戸芸術工科大学非常勤講師.。
 上の写真は私が15年ほど前に制作したソックスエイドです。足がまひしているような方が靴下をはきやすくするための自助具です。以前のソックエイドはひもがなく、靴下をいれる右側のカバー部分はレントゲン写真のフィルムが用いられていました。ひもをつけることで横側からも足がすっと入り、レントゲンフィルムをポリプロピレンに変えくぼみをつけることで、靴下が安定して収まるようになりました。現在は市販されており障がい者の施設で1カ月80~90個生産されています。

 自助具の制作にはPTやOTといった介護職のみならず、私のようなデザイナーや看護師や金属や木工の加工者などさまざまな人たちが参加しています。
 自助具に使用する道具はホームセンターで売っているようなものがベースで、加工のしやすさ、安全性、強度などが基準となります。上の写真は自助具の中でも比較的よく作られるスプーンですが、食器だけにより安全性が求められます。メンバーの一人が歯科の技工剤がインターネットで入手できることを知り、それでグリップ部分を歯科技工剤で作ってみました。

 技工剤の中には歯形を取るための粘土状のものがあり、それをグリップにつけて、障がい者の型が持ちやすいように握ってもらいました。その材料はすぐに固まるので、その人にとってベストのグリップの完成です。歯形を取るための材料ですから衛生面でも問題はありません。グリップはアクリル剤を用いることも多く、すべりにくい、軽いなど材料もさまざま。そうした材料の特性を活かしてその人のニーズにあったスプーンをつくります。極力個々人にマッチしたスプーンをつくることで、少しでも長く自力で食事ができることで食欲や食事の楽しさをアップささせます。

 自助具の開発には材料の開発や物理学的視点といったバックボーンも重要です。私は1人でも多くの人に自助具の制作に関わって欲しいし、そうすることでバックボーンにも広がりが出てくるはずです。

 ▽自助具の問合せ先=「大肢協・自助具の部屋」(☎06‐6940-4189)

(福祉用具の日しんぶん2011年10月1日号)

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