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介護人材不足 ピンチをチャンスに (厚労省 川端裕之氏)2019年11月18日10時27分

 

   厚生労働省 福祉人材確保対策室長 川端裕之さん

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 人材不足に悩む介護業界。厚労省では、あらゆる手を尽くして人材確保に取り組み、ピンチをチャンスに変えていく方針。キーワードは、ICTやAI、介護ロボットなどを使った「イノベーション(技術革新)」と、若い人からアクティブシニア、外国人介護人材まで幅広い人材を活用する「ダイバーシティ(多様性)」、さらに「介護のやりがい(魅力)」を見出すことだと力説する。

 

 介護の魅力を発信する

 

 ――「介護の日」とは、どのような日ですか。

 高齢化の伸展によって、介護を必要とする方が増えています。それに併せて、認知症高齢者の増加や、高齢者単身世帯.老老介護の問題など、介護のニーズも複雑化.多様化しています。そうした中、厚生労働省では、介護に対する理解や認識を深めてもらおうと、2008年から11月11日を「介護の日」として定めました。国民の皆様からの声を集め、制定日は「いい日、いい日」にちなんだ語呂合わせにしています。

 ――どのようなことが行われるのですか。

 「介護の日」の前後2週間を啓発活動の重点期間として位置づけ、国、地方自治体、関係団体などが一丸となって、全国各地で介護にまつわるイベントなどを実施しています。市民向けの公開講座や介護の仕事体験など、介護に関する情報や魅力発信を集中的に行うことで、介護をより身近なものとして捉え、介護に関心を持つきっかけにしてもらえればと考えています。

 ――介護分野では人手不足の問題が深刻化しています。

 人口構造的にどの分野でも人手不足の状態ですが、中でも介護分野は顕著です。昨年度の有効求人倍率は、全産業平均が1.46倍なのに対して、介護分野は3.95倍と高い水準になっています。

 必要な介護サービスが安心して受けられるように、厚労省としては、あらゆる手を尽くして介護人材の確保に努めています。

 

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「イノベーション」「ダイバーシティ」

 

 ――具体的には。

 就業促進や離職防止など、総合的に取り組みを進めていますが、最近のトピックスは処遇の改善です。10月から消費税の財源を使って、ベテランの介護職員を中心に、更なる処遇改善を行う施策を実施しています。介護を自らの仕事としていくために、他産業と遜色のない賃金水準を実現していきます。その上で、「イノベーション」と「ダイバーシティ」をキーワードに、人材確保策に取り組み、ピンチをチャンスに変えていきます。

 ――「イノベーション」と「ダイバーシティ」とは。

 「イノベーション」とは、技術革新という意味です。今はICTやAI、介護ロボットなどのテクノロジーがすごく発達してきています。こうした技術を介護現場に積極的に取り込み、業務負担の軽減や生産性の向上につなげていきます。例えば、ICT機器を導入して、記録や情報共有にかかる業務の負担をできるだけ少なくしたり、介護ロボットやセンサーを上手く使って、効率的かつ効果的な見守りを実施したりするイメージです。厚労省でも生産性向上に向けたガイドラインを策定し、ホームページ上で公開していますので、うまく活用してかっこいい職場を目指してもらいたいです。

 ――介護現場に技術革新を起こしていく必要性があるということですね。

 その通りです。もう一つの「ダイバーシティ」は、多様性という意味です。介護現場に若い人や子育てを終えた人、アクティブシニア、外国人などの多様な人材が集まり、多様な働き方をすることによって、介護人材の裾野が広がっていくことをイメージしています。ただ、ここで大事なのは、そうした人たちに介護の仕事や魅力を知ってもらい、実際に入職するきっかけをつくっていくことです。そのためには、ターゲット層に合った、きめ細やかなアプローチが必要になります。そしてこの多様性の強みは、何より様々な人々が集まることにより、より良いアイディアが地域に生まれて自然と交流の機会が増えることに繋がります。

 

 今後の施策

 

 ――どのようなアプローチが必要なのでしょうか。

 例えば、若者層に介護の仕事を選んでもらうためには、進路指導を行う先生にも介護の仕事や魅力を知ってもらう必要があります。21年度から順次施行される中高生の新学習指導要領では、介護に関する内容の充実が図られますので、それに合わせて、学校の先生に介護の「入門研修」を受けてもらったり、インターンシップや職場体験などを実施してもらえるよう、文部科学省と連携して支援していきます。さらに、イベント会場やメディアなどで、実際に介護の現場で働いている方に介護の専門性や魅力、働きがいなどを語ってもらう企画も行っていきます。9月には、若者が多く集まる国内最大級のファッションイベント「東京ガールズコレクション」で、介護のイベントを行ったり、秋からはテレビのBS放送で介護の番組を放送したりして、若い人に介護の仕事に関心をもってもらうきっかけをつくっていきます。

 ――まずは知ってもらうという作戦ですね。

 アクティブシニアの方々にも期待しています。今や人生100年時代で、健康寿命も延び、高齢者も若返っています。そうした元気な方々に、介護の担い手になってもらう仕掛けをつくっていきます。具体的には、経済界などと連携し、企業の退職前セミナーで、「入門研修」を実施してもらったりします。ただ、会社を退職されて、すぐに介護の分野で仕事をしてもらえるかと言えば、不安の方が大きいと思います。そこで、介護の仕事のハードルをできるだけ下げるような取り組みが必要になります。一言で介護の仕事と言っても、食事、入浴、排泄などの専門的な介護のほか、調理や洗濯、買い物、送迎などさまざまです。これをできるだけ機能分化して、介護の周辺業務から取り組めるようにすれば、参入のハードルを下げることができると考えています。それによって、スキルの高い人は、より高度な介護に専念できるようになりますので、効率化も図ることができます(図2)。

 ――多様な人材を集めて、チームでケアしていくイメージですね。

 最後は外国人の方です。今年4月から入管法が改正され、介護の分野にも新たな在留資格「特定技能」が創設されました。日本語と技能の試験に合格すれば、最長5年の「特定技能」の在留資格を取得できますので、今後、介護現場に外国人が増えていくことが見込まれます。そうすると、異国の地で介護の仕事を頑張ろうと思ってくれている人達を、いかに働きやすくするかが大事になってきます。日本語学習の支援や悩みの相談、海外への情報発信など、外国人を受け入れるための環境整備に力を入れていきます。

 

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 ――最後に、川端室長が考える介護の仕事の魅力を教えてください。

 よい介護を行うには、介護スタッフが「やりがい」を持って働くことが必要です。それは、利用者の皆様やご家族との信頼関係にも繋がると思います。介護という仕事には、人々の人生に寄り添うという極めて高いコミュニケーション能力が必要とされます。日々、コミュニケーション能力に磨きをかける楽しさや、専門性に基づいて高齢者や障がい者の自立を支援していく深さがあります。そして、目の前の人や家族を支援することが、その地域や社会を支える重要な仕事になっています。

 「介護の日」を通じて、介護の仕事の意義や魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたいと思います。

 

(かわばた・ひろゆき) 2002年に厚生労働省入省。障害者福祉政策、雇用創出政策、子育て支援政策を担当。14年9月から17年7月まで、日本貿易振興機構ニューヨーク事務所厚生部長としてJETROニューヨーク事務所に出向し、日米ヘルスケア産業の促進に取り組む。18年7月から医政局総務課課長補佐として、地域医療構想、医師偏在対策、医師の働き方改革を三位一体で進める医療政策に従事。19年度より現職。

 

介護の日しんぶん 2019年11月11日

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