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【特集】介護現場の働き方改革2019年9月 9日14時31分

 

人材不足を乗り越える

処遇改善、ICT・介護ロボット活用、外国人人材の活躍

 団塊ジュニア世代が高齢者になり始め、人口減少も続く「2040年問題」に関心が高まっている。社会保障制度に関しても、今以上に介護人材不足が深刻化することが確実視されており、介護現場の変革、支え手の確保が重要となる。国でも▽給与引き上げなどの処遇改善策▽ICT・介護ロボットなどによる生産性向上と介護職員にとって働きやすい職場作りのためのマニュアル作成▽外国人介護職の積極活用――など次々に対策を打ち出す。

 

加算算定で介護職員平均給与 「30万円超」

 介護人材不足を背景に、国では処遇改善のため2010年10月~11年度末まで「介護職員処遇改善交付金」を実施し、以降も介護報酬上で「介護職員処遇改善加算」として継続している。加算算定には、人材育成の取組みや、労働環境改善のための「キャリアパス要件」「職場環境等要件」を満たす必要があり、その程度に応じて5段階(Ⅳ・Ⅴは廃止予定)に加算額が設定される。

 18年10月実施の厚生労働省調査によると、処遇改善加算の取得状況は(Ⅰ)69.3%、(Ⅱ)11.6%、(Ⅲ)9.1%、(Ⅳ)0.4%、(Ⅴ)0.6%となり、約91%の事業所が処遇改善加算を算定している。なかでも加算額の大きな(Ⅰ)算定が最多となるなど、事業経営にとって、重要な加算となっていることがわかる。

 こうした取り組みの成果も現れており、厚労省の介護従事者処遇改善状況等調査によれば、加算算定事業所勤務の介護職員の平均給与が前年から1万850円増加し、30万970円(月給・常勤)まで改善。同調査で介護職員の一時金を含む平均月給が30万円を超えたのは今回が初めて。

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 19年10月には、消費税率10%改定の増収分などを原資にした「介護職員等特定処遇改善加算」が予定されており、既存の加算算定を前提に、さらなる取組みを実践する事業所に加算上乗せの仕組みを導入する。

厚労省 「生産性向上ガイドライン」作成 先駆事例を全国展開へ

 介護現場の生産性向上のため、厚労省は19年3月に「介護現場の生産性向上ガイドライン」を公表した。「施設」「在宅」「医療系」の3部構成で、それぞれ▽先駆的事例の紹介による点から面への展開▽手順書の作成によるサービス平準化▽製造業で取り組まれる「5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)」「3M(ムリ・ムダ・ムラ)」などのカイゼン活動を応用すること▽課題の見える化を進めること――など、働きやすい環境づくりと、介護職一人当たりの生産性向上のための先駆事例が多数収録されている。今後も、随時更新されたガイドライン制作が予定されており、先駆事例の「点」を全国各地に「面」で広げることを目指す。

ICT・介護ロボット活用に補助・助成制度の充実

 事例として有効性が紹介されているものにICTや見守りセンサーなどの介護ロボットの活用がある。業務効率の向上に留まらず、利用者の状態像の収集と解析による良質の介護サービスの提供に寄与することも期待されている。

 介護ロボット普及のための導入補助も充実している。国の「地域医療介護総合確保基金」では、人的介護サービスを提供する介護事業所(居宅・施設とも)に、審査の上、一機種につき60万円までの半額助成(最大30万円)を実施する。厚労省職業安定局でも「人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)」の助成対象機器の中に「装着型(非装着型)移乗介助機器」があり、条件を満たせば最大助成額300万円が受けられる。

 社会福祉法人向けの低利融資としては「福祉医療機構」(東京都港区、中村裕一理事長)の実施する特別融資「働き方改革に資するICT・介護ロボット等の導入に係る融資」がある。ICTや介護ロボット導入で業務改善に取り組む介護保険施設(介護医療院含む)に、無担保で3000万円まで融資するもの。同機構は、地域包括ケアシステム構築を目指す国の政策を後押しする目的で、これまでも社会福祉法人や医療法人などに様々な融資活動を実施してきたが、中でもICTや介護ロボット導入は特別融資として重点化する。19年度は同機構全融資事業で資金交付額3168億円を確保している。

 経済産業省も「サービス等生産性向上IT導入支援事業」(https://www.ithojo.jp/)として、対象登録されたICTの導入・活用に、最大で900万円の半額補助(最大補助額450万円)をする。

介護ロボットの安全運用「JIS Y1001」開始

 介護ロボット導入のための資金支援策が講じられる中、それでも介護施設が介護ロボット導入を躊躇する背景に、運用方法やマネジメント体制などの統一的項目が曖昧であるなど安全性に関する課題があった。

 19年7月には、介護ロボットなどのパーソナルロボットをサービス提供事業者が使用して、受益者(利用者)にサービスを提供するB2B2Cモデルの安全対策などサービスに関する規格「JIS Y1001」が施行された。介護施設・事業者での介護ロボット活用の普及のため、国を挙げて環境整備が進む。

「40年問題」外国人人材活躍がカギ

 外国人介護職の確保に向けて、19年4月には「改正入国管理法」が施行された。新たな在留資格「特定技能」の中に「介護」を追加するもの。受け入れを希望する介護事業者からの申請が始まっており、順次現場で外国人介護職の活躍が始まる。

 また、同制度では、上限5年間の「外国人技能実習制度」から移行する場合、さらに5年間の在留を認める。

 40年問題を展望するとき介護職不足は明白で、外国人人材の活躍の重要性は言うまでもない。

 ただ、外国人にとって介護施設が働きやすい環境でなければ、現場を支え、より良い介護サービスを維持する底上げの期待もかなわない。働き方改革の中で、「給与引き上げやキャリアアップ制度などの処遇改善」「ICT・介護ロボット活用」などを通じ、外国人を含む介護職を大切にする経営層の工夫も期待されるところだ。

2019年7月10日号

 

働きやすい職場づくり

福利厚生で「給与前払いサービス」導入

 

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 介護職が働きやすく、生産性の高い働き方への改革のために、事業者自ら福利厚生の充実を始める事例もある。東京・埼玉8拠点で訪問介護、通所介護、ケアハウスを展開する「ビーステップ」(東京都練馬区、矢嶋明会長)では、従業員約160人の福利厚生の一環として、リコーリース(東京都江東区、瀬川大介社長)の給与前払いサービス「RiLTA(以下、リルタ)」を5月に導入した。

 

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 ビーステップの矢嶋会長は「通常、給与は月1回支給されるが、生活資金は日々細かく必要なため、社員の福利厚生サービス向上のため前払いサービスを導入した」と導入経緯を話す。

 「WEBサイトで画面上に働いた実績が金額として積み上がるので、特に若い社員には、勤労の実感を日々得られるのではないか。仕事のモチベーションになる」と社員受けも上々と感想を述べる。

 実働実績から前払い可能額が設定されるため、借金として返済を個人で抱えることがないことも、消費者金融利用との違い。

外国人介護職の「働きやすさ」改革

 同サービスを開発・提供するリコーリースでは「すでに大手飲食店チェーンや運輸業界などでは、給与前払い制度を求人応募増や職場定着のために導入し成果を挙げている」と人材募集・離職率低下のための福利厚生サービスとして、他産業分野では普及が進んでいるという。

 また、今後、外国人人材の活躍が期待される介護分野では「フィリピンでは給与月2回払いが一般的であることや、母国に送金を頻回したいというニーズなど、多様性に柔軟に応えることができる」と導入効果を説明する。

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手間が少なく、導入しやすい料金体系

 「リルタ」は事業者が銀行口座に資金をあらかじめ入金し、勤怠情報をWEBサイトに登録することで、従業者の前払い申請があった場合に、支払い可能額以内(勤務済給与額70%以下で事業者が任意設定)であれば、事業者銀行口座から従業者に振込が可能となる仕組み。指定の金融機関口座であれば、事業者が前払いのための振込手続きは不要。

 給与前払いサービスは労働基準法等の観点からスキームの制約が強いものの、リルタは法令を遵守したスキームとなる。

 同業他社に比較して、手数料の安さも特長で「基本手数料」8,000円/月(契約より3カ月無料)と「利用手数料」1件250円(指定金融機関口座利用時の振込手数料)。1件当たりの前払い金額にかかわらず手数料が一定なので大手事業者でも、中小事業所でも導入しやすい料金体系。

2019年7月10日号

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