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インタビュー 香川県高松市長・大西秀人氏 インセンティブ財源 調整交付金の流用に反対 [2018/01] 2019年2月20日17時00分

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【2018同時改定へ 我々の主張

全国市長会 介護保険対策特別委員会委員長 香川県高松市長 大西秀人氏

 

 今回の介護保険見直しでは、それぞれの地域が抱える課題に合った地域包括ケアシステムを構築するため、保険者機能の強化が打ち出されている。その中で、地域の高齢者の自立支援・重度化防止への取り組みを進め、一定の指標のもとで一定の効果を挙げた場合に財政的インセンティブが与えられるなど、保険者としての市町村の役割を一層重視する見直しも予定されている。一方で多くの市町村では、既存サービスの枠を超えて、互助・共助を軸とした高齢者の介護予防・生活支援サービスの創出に苦心している現状もある。

 厚生労働省の社会保障審議会で、全国市長会の代表として介護保険部会と介護給付費分科会の委員を務め、自治体の実態を訴える香川県高松市の大西秀人市長に、保険者としての立場から介護保険見直しへの意見を聞いた。

 

総合事業の移行状況確認を

 ――総合事業の介護予防・生活支援サービス事業での訪問型サービスと通所型サービスは、多くの市町村で、現行相当型となっています。また地域ケア会議が十分に機能していないなど、高齢者の自立支援・介護予防ニーズと実際のサービスのあり方に乖離がみられる状況にあるようです。

 大西 従来からの介護事業者だけでなく、様々な地域の力も活用しながら、地域の高齢者を支えようというのが総合事業での介護予防・生活支援サービスだ。しかし現状は、現行相当型の枠を超えたサービスの拡がりがあまり見られず、特に小さな自治体では多様なサービスの担い手が十分に存在していない。17年3月末までの総合事業への移行状況について、厚労省に調査などをしてもらい、当初の狙い通りに進んでいるのか検証する必要があると考える。このまま進めていては、互助・共助の仕組みづくりの実態と理想とが、かけ離れていってしまう恐れがある。

 高松市では、16年10月に総合事業への移行を開始したものの、市内44の地域コミュニティ(おおむね小学校区ごとの圏域)のうち、住民主体サービスがある圏域は6分の1程度に留まっている。地域で担い手となり得る人があまりいない中で、高齢者のニーズに対応できる生活支援サービスや受け皿となる担い手をどのように創っていくのか。各地域で地域課題を浮き彫りにし、早急に必要なサービスを揃えるべく取り組んでいるところだ。

 ――具体的にはどのような取り組みがありますか。総合事業へ多様な担い手に参画してもらいやすくするには、どのような取り組みが必要でしょうか。

 大西 高松市では、15年度から市全域、小学校区、サービスごとの3層からなる協議体を設けており、各地域でそれぞれの課題を見つけ、互助・共助の新たな仕組みづくりを模索している。第2層目の協議体となる小学校区ごとの「地域福祉ネットワーク会議」立ち上げの呼びかけや、その運営サポートなどのため、市が社会福祉協議会に委託し、8人の生活支援コーディネーターを各地区へ派遣している。地域課題を掘り起こし、それに対し誰がどのように関わって解決していくのか、地域住民を中心に関係者の活発な議論を促すため、コーディネーターが活躍している。

 そのような中で、訪問B型の生活支援サービスや、高齢者の居場所づくりなど、各地域で住民主体の新たな取り組みが徐々に芽生え始めた。特に14年度から始まった高齢者の居場所づくりは、総合事業と同様、介護予防施策として非常に重要だ。主に要介護認定を受けていない人が対象で、民家や集会所など現在市内で240カ所が運営されている。市では運営支援のため、必要な経費(年2~7万円)を助成している。担い手は、元気高齢者や子育て中の母親世代など幅広い。居場所に参加する時間内には、必ず介護予防の体操を行うことが条件で、その他はお茶会やカラオケ、ネイル、折り紙など、様々な活動を繰り広げていて、高齢者の日々の楽しみや活性化などの効果につながっている。場所によっては、地域の子供たちとも交流できることから、地域共生社会を目指す多世代交流の場としても活動を期待している。

 

「10%上乗せ特例」の継続望む

 ――自治体の財政状況など、総合事業への取り組みが進めにくい状況もあるのではないでしょうか。

 大西 総合事業の上限額は、事業開始の前年度の予防給付(訪問介護、通所介護、介護予防支援)及び介護予防事業の実績額に、75歳以上の伸び率をかけ合わせた額が原則だ。その範囲内で多様な社会資源を掘り起こし、サービスを開発していかなければならない大変さがある。ただ今年度末までの移行期間中は、移行前年度の介護予防の実績額に10%上乗せして算出できる特例が設けられている。このような特例を来年度移行も継続してもらえるよう、国に要望したい。

 また特に小規模の市町村ほど行政の人材が限られて、地域への目が行き届きにくい。来年度から国民健康保険の財政運営の責任主体が市町村から都道府県へ移るが、それと同様に介護保険も小規模自治体の負担を軽減するため、より保険者の広域化などを進めていく必要があるだろう。介護給付費分科会でもそのような意見が出されている。

 

別財源の確保を

 ――自立支援・重度化防止に対する都道府県・市町村の取り組みが、指標をもって評価され、インセンティブも与えられる仕組みが導入されます。

 大西 自治体として目指すべき指標が具体的に示され、それに向かって各々が取り組み、その達成度合いによって財政的に評価されるという仕組みが設けられたこと自体は、良いことだ。しかし、その場合のインセンティブの財源を、介護保険の調整交付金から調達するという方針が問題で、容認できない。調整交付金は、後期高齢者の割合や高齢者の所得水準の状況など、自治体自身ではどうしようもないハンディをカバーするものであり、インセンティブの財源とするのは、交付金本来のあり方に逆行するものだ。例えば消費税率改定に伴う5兆円強の増収分の活用など、介護保険とは別の財源から手当すべきだと考える。

 ――2025年を見据えた地域包括ケア構築へ向けて、市町村の役割はとても大きいものです。今後、地域の代表として、どのようなことを目指されますか。

 大西 介護保険見直しでは、今回は、医療介護総合確保推進法が成立した下において、初の医療・介護同時改定ということで、医療と介護の連携の強化はもちろん、いかに持続可能な制度としていくか、財政、人材確保、介護基盤整備など、あらゆる面で課題解決を進めなければならない。その中で、市町村の実態にも合った見直しが図られるよう、我々も声を上げていくし、国もその声を尊重してもらいたい。

2018年1月10日号

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