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シニア住まい塾《72》 おたがいさん2013年5月28日14時40分

地域資源としてのお年寄りを支える

 神奈川県藤沢市にある小規模多機能型居宅介護「おたがいさん」は、昨年11月にかながわ福祉サービス振興会主催の、第1回かながわ福祉サービス大賞「福祉の未来を拓く先進事例発表会」で大賞を獲得しました。

 「被介護者ではなく地域資源としてのお年寄り、たくさん!」というテーマで発表されたものです。

 運営は「あおいけあ」の加藤忠相さんで、30代の情熱ある青年社長です。敷地内に認知症対応のグループホーム1ユニット、15人定員のデイサービス、25人定員の小規模多機能施設、さらに加藤さんの自宅があります。

 それぞれの施設の間には、手押し式の井戸があり、花が咲き乱れ、畑には野菜が作られ、近所の子どもたちが作った秘密基地があり、発砲スチロール数箱を田んぼにして毎年稲を育て、稲刈りをして新米をとる風景もあります。

 柿の木の下にはベンチが置かれ、お年寄りが柿の葉を揉んで作った「柿の葉茶」を飲んで憩っていました。

 敷地全体が整理整頓されているわけではありません。雑多に農機具が置いてあったり、今、使ったばかりの車いすがあったり、落ち葉があっちこっちに落ちていたり。でも、どことなく全体が田舎の「おばあちゃんの家」といった雰囲気です。

 小規模多機能の「おたがいさん」の入り口は駄菓子屋さんになっています。なつかしい10円の飴、メンコなどが置いてあり、店番は利用者のお年寄りがします。グループホームの駐車場で、先日、デイサービスの職員の結婚式をしたのだとか。法人内のお年寄りと職員がドレスを縫い、頭の飾りものを作り、花を用意し、とっても素敵な結婚式をしたそうです。

 近所の方がしばしば立ち寄ってくれて、地震の時などは「大丈夫かぁ」とガスや電気を見てくれるそう。流しそうめんや餅つきは近所の名物になっており、餅をつくのも、こねるのもお年寄りが行います。できあがったお餅はみんなで丸めて、小豆や大根おろしも用意して、近所の人とみんなで楽しむそうです。

 「おたがいさん」の内部は田の字型の建物で、間仕切りをとると全部が1つの部屋になる仕様です。畳の部屋あり、洋室にベッドの部屋あり、こたつに寝転ぶ人ありで、皆さん自由に過ごしています。

 職員さんが「お天気だから、江ノ島へドライブに行きましょう」というと、すぐに5~6人の手が上がりました。「行かない、昼寝している」という人もいてそれも自由。「コーヒーを飲みに行きたい」という声も聞こえて、他の職員さんが近所の喫茶店に車いすを押して行きました。

 いろいろなことを職員さんがお年寄りに教えてもらう場面が見えます。「稲刈りした稲を使ってお正月のお飾りを作りました」「柿の葉茶は作れるようになったので、今度はゴボウ茶を教えてもらいます」など。利用者はここにくると、教える場面が多くて張り切るようです。

 地域の公園の花植えのボランティアにも行きます。栗拾いに行くと、栗をイガからむく作業もお年寄りの出番。合間に子どもたちが「秘密基地できたから見せてあげる」「池のオタマジャクシのしっぽが出てきた」などの報告も飛び交うそうです。「利用者がどんな人生を送ってこられたのかを把握して、楽しめることや活躍できることを考えながら主体的に生活してもらっています」と加藤さん。

 今でこそ、運営も順調ですが、グループホーム1ユニットで始めたときは苦労も多かったといいます。

 「特養を1カ所作るよりも、小規模多機能を数カ所作って家を拠点にしてお年寄りが暮らせば、本人も税制面からも助かるのでは」という意見は、国や県レベルで考えてほしいです。

 実際にはお年寄りや家族が小規模多機能を理解しておらず、知らない人が多いのです。藤沢では前号で紹介した理学療法士が率いる小規模多機能「絆」や、今回の「おたがいさん」の施設長らが市民に小規模多機能施設の良さを知ってもらう講演会を数回試みています。小規模は通所、宿泊、訪問があるので、どこもスタッフはてんてこまい。施設長は運営面も担っているのでさらに忙しいのですが、「まずは知ってもらおう」と走り回っています。

「おたがいさん」=神奈川県藤沢市亀井野4-12-35、0466・83・6317

  • 若い男性スタッフに縫い物を教える利用者.JPG














  • 若い男性スタッフに縫い物を教える利用者
  • 庭で近所の子どもたちと憩うお年寄り.JPG














  • 庭で近所の子どもたちと憩うお年寄り
  • 入り口にある駄菓子屋.JPG














  • 入り口にある駄菓子屋

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