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シニア住まい塾《71》 小規模多機能型居宅介護「絆」2013年4月25日08時10分

理学療法士が施設長 

  神奈川県藤沢市に理学療法士が運営する小規模多機能居宅介護事業所が昨年9月に開設されました。理学療法士をパートで雇ったり、または病院を定年退職した人を非常勤で配置している小規模多機能は見たことがありますが、代表者自身がPTというのは、私は初めてでした。

 この小規模多機能居宅介護「絆」の代表を務める菅原健介さん(32)のお母さんは、看護、介護関係の仕事に長く携わる菅原由美さん(全国訪問ボランティアナースの会「キャンナス」代表)です。それを見ながら育ってきた健介さんは、自分には合わない世界、介護や医療の仕事は辛い仕事だと、ずっと避けてきたそうです。

 健介さんは大学卒業後、広告関係の一般企業に勤務しましたが、媒体を通して反応を待つ仕事は、もう一つ打ち込めなかったとか。目の前で人が喜んでくれる仕事はないかと模索した結果、理学療法士の学校に通い、資格を取得しました。

 卒業後、リハビリに特化している病院に勤務しましたが、その最中に東日本大震災が起こり、母親の率いる訪問看護と共に被災地支援に行ったのです。実際に行ってみると、介護、看護、医療に関して、地域の連携がまるでないのに驚いたそうです。何とかしなければと思っても、個人の力ではどうにもならない。では他地区の住民が介護、看護、医療の連携がとれていて、いつでもだれでも情報が手に入るかというと、それは違う。事業者間の連携のなさに驚いたと言います。どこに行っても、お年寄りは小規模多機能なんて全く知らない、という状況だったそうです。

 地域包括支援センターが、一人ひとりの要望に沿った事業所や、人の手配ができるかというと、そうでもないらしい。今の自分がやれることからやっていこう、と藤沢で訪問リハビリを始めました。そのかたわら、藤沢の施設や事業所をいろいろと見て回るうちに、小規模多機能施設「おたがいさん」の代表者、加藤忠相さんとの出会いがありました。そこで、菅原さんも小規模多機能を開設しようと決心し、同世代の小規模多機能の代表者が集まり、市民に向けて「小規模とは何か?」という小さな会を病院や公民館で開催し始めたのです。これは徐々にですが、地域の医師も含めて関心を持ってくれるようになっています。

 「おたがいさん」は、敷地面積の広い所にありますが、「絆」は藤沢駅近くのビルの一角です。3LDKのマンションですから、庭などはありません。  ハード面では不利ではないかと思ったところ、思わぬ副産物がありました。マンションの5階に、小規模多機能施設、デイサービス、託児所があるのですが、階上は一般の住民が住んでいます。マンションに暮らす共働き夫婦が、いつでもウェルカムという姿勢の小規模多機能施設へ、母親が帰ってくるまでの間、子どもをここで過ごさせたいと来てくれるのです。つまり、子ども付き小規模多機能です。

 一般のデイサービスのように「折り紙しましょう」ではなく、子どもの方から「鶴の折り方を教えて」「もっと他のも折りたい」と言ってくる関係が自然にできました。同じようにけん玉やお手玉、おはじき、オセロなどもある施設になりました。バランスボール乗りや風船バレーも子どもと一緒にします。子どもも喜び、お年寄りも嬉しそうで、親も安心できる施設に育ってきています。居ながらにして地域密着が整ってきたのです。

 菅原さんの目指している小規模は、病院でリハビリを受けた人が退院した後、小規模を使って、自宅に戻って自立するという中間施設としての存在です。通常は病院から理学療法士や作業療法士のいる老人保健施設に行く例が多いのですが、いま老健はなかなか入れない状態。そこで、地域に根ざした小規模多機能を利用してください、と市民に訴えています。

 利用者の中に、某有名ホテルでシェフをしていた方がいます。料理を教えてもらうプログラムにすると、麻痺で動かなくなっている手が自然に動き出し、包丁を握るのだとか。自分では細かく切れない野菜もスタッフには厳しく指導する、うまく切れないと「こんなの食べられない」と怒る。もつれていたしゃべりも、怒る口調になると、なめらかさがでてきました。現在では、スタッフを「いい料理人に育てるまで仕込む」と意欲を燃やしています。

 ゴルフの好きな利用者さんには、リビングのイスやテーブルを片付けて、パターを打つ練習を。その練習姿は、バランスをとるのにとてもいいそうです。他にも船釣りが好きだった方は、もう一度、船で釣りをしたい、という希望。船に乗り移るにはバランスの取り方が大変、釣竿を繰る腕力もいるなど、ハードルは高いのですが、リハビリをいくつも組み合わせて、目標に近づくようにしています。こういった個々の目標にあわせたリハビリが「絆」ではできる、菅原さんは言います。

 建物の1階には、居宅介護支援事業所と訪問介護、訪問看護の事務所があります。看護師は日中、階下に常勤でいますが、夜間はオンコール可です。いずれは「絆」として看護師も雇用したいそうです。

 実際にやってみると、小規模多機能の運営は集客が大変で、個々の希望に応じたサービスを考えると職員数も必要になったり、食事作りも大変です。でもみんなで作り上げていこうという活気が満ちています。

 若い代表者たちの知恵と団結で、介護、看護、医療と連携をとり、自宅で最期までを目指す小規模多機能が発展することを期待しています。

小規模多機能居宅介護「絆」=神奈川県藤沢市鵠沼橘1-2-4-505、0466・27・3911

  • 一番右が代表の菅原健介さん。一番左の男性は元シェフの利用者さん.JPG














  • 右が代表の菅原健介さん
    左端の男性は元シェフの利用者さん

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