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インタビュー 鶴巻温泉病院長・鈴木龍太氏 医療と介護と在宅つなぐ慢性期リハビリ [2018/02]2019年2月24日16時05分

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「第5回慢性期リハビリテーション学会」開催記念 地域包括ケアシステムの実践

鶴巻温泉病院長/医療法人社団三喜会理事長 鈴木 龍太氏

 医療介護連携を進めることで、できるかぎり在宅生活をする「時々入院、ほぼ在宅」に注目が集まる。その取組みとして慢性期リハビリテーションがある。リハビリ室にとどまらず、介護事業所との連携などにより、在宅復帰から在宅生活期までリハビリテーションを貫徹させることが求められる。同時に、効果を挙げるために欠かせない栄養改善のための摂食リハビリや、在宅復帰阻害要因とされる排泄の自立に向けたリハビリにも取り組む。「第5回慢性期リハビリテーション学会〜リハビリテーションで広がるEnjoyment of life〜」(2月26日、27日、会場:パシフィコ横浜)を目前に、学会長の鈴木龍太氏(神奈川県秦野市・鶴巻温泉病院院長/理事長)と、同病院で在宅復帰を支援する各専門職に慢性期リハビリテーションの現場と課題について聞いた。

 ――鶴巻温泉病院と地域性について聞かせてください。

 当院は神奈川県の中ほどの「湘南西部地区」(神奈川県秦野市、伊勢原市、平塚市、大磯町、二宮町)に立地し、圏域の人口は約58万人、高齢化率は26・3%。私が理事長を務める法人内には急性期が中心の「横浜新緑総合病院」や、在宅医療、老健施設、訪問看護ステーション、グループホーム、デイサービス、訪問介護などがある。ほかに、同じセコム提携病院の医療法人横浜博萌会(高瀬利男理事長)の「西横浜国際総合病院」とともに、地域に根ざした医療提供を行っている。

 入院患者は06年には東京、横浜、川崎で4割だったものが、現在では10%以下になっている。これは東京に大きな回復期リハビリ病院ができた影響だ。そこで小田原市など県西地域の患者さんを集め病院経営を進めている。

――少子高齢化と社会保障制度改革で、病院のあり方も大きな転換点を迎えています。

 少し古い試算ではあるが、国では一般病床100万床、回復期や療養病床36万床、精神科34万床のうち、一番費用のかかる一般病床を減らす方向で改革が進む。精神科も24万床程度に減らす。一方、少子高齢化の中で求められる回復期と療養病床は少し増やす。こうした改革を全体で見れば、結局、病院病床は20万床ほど減らされることになる。

 つまり、慢性期に多いとされる医療必要度の低い「医療区分1」の人など20万人を在宅に帰すことを目指す。

 ここでいう在宅は「時々入院、ほぼ在宅」とも言われるように、在宅生活期間を最大化しながらも、急変時やレスパイト入院などのように柔軟に対応できる仕組みも充実させるモデル。

――広範に及ぶ慢性期リハビリに関心が高まっています。

 当院は、回復期リハビリ(206床、回復期リハ1=最も重症な患者)のほか、神経難病患者などの特殊疾患病棟1(60床)、障害者施設等入院基本料(60床)、医療療養病棟(「入院基本料1」144床、「入院基本料2」96床)、緩和ケア病棟(25床)からなる。「急性期リハビリ以降のすべて」とされる慢性期リハビリという意味では、その実践に取り組んでいるといえるだろう。

 リハビリテーション専門職は全206人体制で、理学療法ではリハビリロボットの「HAL」などを導入している。歯科医師は2人。管理栄養士は11人。看護師も認定看護師、専門看護師のほか、診療の一部ができる特定看護師が在籍している。歯科衛生士やソーシャルワーカーもいる。言語聴覚士も多く在籍しており、嚥下機能回復にも取り組む。

 制度では7割の在宅復帰(回復期リハビリ)が求められるが、当院では85%ほどが在宅復帰を果たしている。

 ――具体的にはどのようなリハビリですか。

 たとえば神経難病患者の場合、50歳などで発症してからの期間が長期に渡り、徐々に進行するため、在宅生活されることが多い。在宅で呼吸器を使用する人もいる。その場合、支え手の家族が疲れてしまうため、介護休暇入院(レスパイト利用)として数カ月ごとに2週間程度入院して生活される事がある。その多くを当院で受け入れて、リハビリを提供するということだ。

 ――高齢者のリハビリについては。

 慢性期の特徴は臓器別でないこと。チームケアが求められ、最期までという意味で、終末期リハビリもあるということ。QOLも考える必要がある。

 リハビリの進め方も家族参加型で「何を目的に進めましょうか」といった事から取り組んでいる。急性期であれば病気や怪我を治すという目的が明確だが、慢性期はこの部分が様々だからだ。

 私は「高齢者だから」「90歳だから」といった理由で、積極的なリハビリをしないというのはエイジハラスメントだと思っている。年齢が前提にあるのは問題だということだ。その判断に「適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」(厚労省研究班報告書)としてのフレイルを基準として用いるべきだと考えている。

 第5回慢性期リハビリテーション学会のテーマは「リハビリテーションで広がるEnjoyment of life」とした。地域包括ケアシステムでは自助・互助が謳われていることから、これにつなげる事ができるように、リハビリテーションに取り組むということだ。

 ――急性期から転院してきた患者のリハビリはどうですか。

 強調したいのは、発症10日程度で転院してきた患者と、急性期に入院してギリギリの2カ月経ってから転院してきた患者では、FIM利得(機能的自立度評価表)で、早期に転院してきた患者ほど改善が見られるということ。

 たとえば脳卒中の場合、評判の良い急性期病院に入院できた時には、本人や家族としては少しでも長く治療を続けたい思いがあるのであろうが、早く良くなって在宅復帰するという意味では、正しくないことを強調したい。

 ――維持期(生活期)リハビリはどうですか。

 維持期(生活期)リハビリは、制度上、13点と多く評価されないためレクリエーションなどに取り組むことになる。当院では独自にレクリエーションスタッフが12人おり園芸療法や音楽療法などに取り組む。

 

 ――在宅復帰後のリハビリテーション計画の一貫性が課題となっています。

 退院後もリハビリを継続してもらうため圏域の「鶴巻」「鎌倉」「足柄」地区の訪問リハビリテーションに取り組んでいる。

 他にも「訪問診療」や管理栄養士による「訪問栄養指導」、さらに「訪問歯科」「訪問薬剤指導」も実施している。訪問栄養では食事の食べ方から、調理の仕方までを指導する。法人全体で在宅への訪問系サービスへのシフトを大きく進めている。

 こうした在宅中心に病院を行き来する新しい考え方については、この数年で大きく受け入れられるようになっており、浸透してきている。

 ――在宅復帰がうまくいく背景には何がありますか。

 考えられる要因はいくつかあって、ひとつは脳卒中の治療で「血栓溶解療法(t―PA治療)」が開発されるなど、治療が進み障がいが全体的に軽くなったこと、もう一つは在宅の受け入れ体制が整う中で、重症者でも受け入れられる体制がかなり進んだ事がある。緩和ケアであっても、受け入れてくれる訪問診療医や訪問看護が増えたことは、在宅復帰を諦めていた患者家族の強力な支えとなっている。

 また、リハビリの進歩、例えばロボットリハビリが導入され始めたことも、在宅復帰率を引き上げている要因ではないかと思っている。

 ――介護事業者等との連携がカギなのですね。

 たとえば吸引については昼夜問わず対応しないといけないので、家族の負担も大きい。

そこで介護職が研修を受ければ吸引できる制度が始まったが、実地研修できる施設が少なかったので、当院で1泊2日でできる研修を開講した。通常1カ月以上かかる研修が短期間で済むので、人気となっている。

 ――終末期の緩和ケアでもリハビリに取り組むのですか。

 本来は緩和ケア患者へのリハビリには評価がないが、当院では取り組んでいる。

ADL低下は避けられない状況でも「できるだけ家に帰る緩和ケア」を目指して、リハビリを続けることで、間違いなくQOLは上昇する。

2018年2月10日号

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