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生き活きケア
生き活きケア 杜の風・上原 排泄自立支援の取り組み [2018/08]2019年3月27日00時15分

 

【特養 「杜の風・上原」(東京都渋谷区)

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元気になったら家に戻ろう

「私たちがめざすのは、低下した栄養状態や水分摂取、運動不足などを改善して正常な老いに戻すケアを実践することで、在宅復帰も可能にしたい」と、特養「杜の風・上原」(社会福祉法人正吉福祉会)の齋藤貴也施設長は話す。お世話型介護から自立支援介護へパラダイムシフトをめざす政府の未来投資会議でも注目。脱水、低栄養、排便困難、運動不足をケアする取り組みを取材した。

 

4つの基本ケア

 「当施設では、1日1500mlの水分摂取と1500kcalの栄養摂取、生理的・規則的な排便、歩行を中心とした運動量の確保、この4つの基本ケアを実践する。高齢になると筋肉量が低下して、体内に水分を貯める力が低下し体内の水分量が減って、脱水状態を起こしやくなる。排尿を嫌がって、水分摂取をがまんする人もいる。水分摂取で意識がはっきりし、尿意ももどって、トイレの自立も可能になる」と話す特養「杜の風・上原」の齋藤施設長。施設には好みに応じて50種類の飲料やゼリーを用意。入所時の水分摂取量は1日平均915mlが、入所後半年で1日平均1543mlに増加するという。

排泄の自立支援

 おむつは、入所した日に外す。特に便失禁をさせない。便失禁が自信喪失を生み、自立に対する意欲を失わせるからだ。布パンツ+尿取りパッドで対応し、紙パンツやテープ止めおむつなどは使わない。下剤はやめ、水分をしっかり取り、運動することで、ポータブルトイレも活用して、トイレで排便できるようにする。「大切なことは、おむつがない状況で、どのように排泄ケアを行っていくかを考えること。これによって、職員の意識が高まる」と、齋藤施設長。「自立支援の方針を明確に立てること。介護職が弱いのは、理論に基づく介護ができていない点だ」と言う。

「歩く」を思い出す

 「歩けないのは、筋肉量の低下が原因と思いがちだが、歩かなくなると、歩き方を頭が忘れてしまう」。同施設では、5秒間つかまり立ちができれば、歩行練習を行う。「自席→中央廊下→〇号室前→自席、65m、手押し型歩行器で」など、各人、担当者を決めて、1日の歩行距離の目標を立てる。最初は大きい歩行器を使うが、歩き方を思い出していくにしたがって、軽いものに変えていき、最終的には屋外で歩けるようにめざす。

 要介護5で101歳の人は入所してトイレに行くようになった。2年間歩いていなかった人だ。歩行練習して、1カ月で歩けるようになり、家に戻ることができた。施設全体では、8割の人が歩けるまで改善していると話す。

 「4つのケアは認知症にも効果が大きい」と言う。ものごとの把握には、体が起きていることが重要。脱水と低活動を改善することで、認識レベルが低下していた人が、頭もはっきりしてきて、簡単な会話も可能になる。便失禁もなくなり、トイレに行けるようになると、表情が随分良くなってくる。

要介護度の改善5割

 「新規入所者の8割は低栄養だが、入所中にどんどん改善していく。下剤をやめて乳酸菌と食物繊維を摂ることで、排便が形のあるものに変わっていく。腸の回復は、食べたものの栄養摂取を進めて、病気にもかかりにくくなる」と同氏。血液中のたんぱく質の量を指すアルブミン値が改善する。

 この施設では、入所者63人中30人の介護度が改善した。

施設と在宅の相互利用

 4つの基本ケアは、地域で暮らし続けることを支えるためのもの。交代で同じベッドを使うしくみである「在宅入所相互利用加算」を実践する。2、3カ月の施設利用期間中で、それぞれの人の在宅介護での課題を集中的にケアする。家に帰った後も在宅サービスに引き継ぐ。

 88歳男性で要介護4、入院が継続する中でADL低下。階段の上り下りができなくなり、妻は特養入所の申し込みをしたが、入所直前になってやはり在宅で暮らし続けたいと夫婦の意向が強まり、在宅入所相互利用を行うようになった。最初の入所3カ月の間に、水分摂取、運動、排泄自立、栄養摂取を行い、歩行練習もして階段の上り下りができるまでになった。3カ月後に無事退所することができ、同施設のデイとショートを使って、結果的に4年間、施設と在宅を行き来して過ごし、希望した在宅生活を実現することができた。いまは施設の5ベッドを10人で利用する状況で、全体で63%の人が家に帰ることができていると言う。

 「経営面では、要介護度が改善すると介護報酬は収入減になる。63人中30人の要介護度が改善したことで、介護報酬は1200万円減った。しかし一方で、健康状況の改善によって入院する人が減ってベッド稼働率が維持され、おむつ代も省くことができた。評判を聞き、デイやショートの利用者が増えた。介護職員の離職率が低くなり、新規の応募者が増え、採用コストの削減になった」と齋藤施設長は結んだ。

 

【施設の概要】

 2013年4月開設。7階建て建物は渋谷区から無償貸与。特養80人(ユニットケア)、短期利用20 人。平均要介護度3.75、平均年齢90.3歳、デイサービス20人併設。1階にこども園(別法人)併設。

2018年8月10日号

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