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介護保険と在宅介護のゆくえ
介護保険と在宅介護のゆくえ 連載502016年8月26日08時10分

地域包括ケアは住民のためのコミュニティ・ケアにしよう

1.医療費削減のための「在宅復帰」は寝たきりを作りやすい

 2016年4月からの診療報酬では、高度急性期病棟の「在宅復帰率」は80%になり、病棟に「退院支援加算」が導入された。高齢者が入院すると「次を探しておいてください」「ここは3カ月までです」と釘を刺されるのは、14年から導入された「在宅復帰率」が達成できないと、その病棟の単価が請求できないからである。

 内閣府は15年6月に30万床の病床削減計画を発表し、16年度には各都道府県ごとの病床の機能別の削減計画が出される予定である。地域包括ケアの目的の1つが、入院患者を退院させることで医療保険から介護保険に移行し、医療費を削減することにある。人の一生涯の医療費は2,566万円で、その半分は70歳以降に使われると厚生労働省は発表している。だからこそ高齢者の退院は医療費抑制の必須事項であろう。しかし、廃用症候群になった高齢者の退院後の受け皿は容易ではない。特に心疾患などを持つ高齢患者や意欲の減退した患者は、リハビリ病院での受け入れが困難で、在宅復帰は寝たきりにつながりやすいのである。

2.退院促進より入院しないこと

 入院すれば安心できる時代は終わり、入院することで医療は提供されるが、反対に廃用症候群が進み、特に高齢者は歩行や排泄の自立が損なわれる危険がある。高齢者にとって大切なことは入院しないことである。要介護になってからも状態悪化の要因になる転倒骨折や肺炎を予防することが大切である。ケアマネジャーに生活の継続性と同時に悪化原因への対応が求められるのである。食欲がなければ栄養状態が悪化し転倒に結びつきやすく、嚥下状態が悪ければ肺炎を起こしやすく、トイレを気にして水分を控えると脱水症状を起こし、温度が上がれば熱中症になりやすいのが高齢者である。

 多死時代と言われるが、年齢別の死亡原因では90歳を超えると心臓病と肺炎が2大原因である。これらを予防することがケアプランに求められる。家族支援、介護や看護、福祉用具、薬剤師やリハビリなど、多職種連携を担うケアマネジャーを介護保険から外そうとする、介護保険法の改正動向は結局医療費の高騰を招くと思う。

3.パッケージ型サービスは目的にあわせて活用

 地域包括ケアでは小規模多機能や看護小規模多機能、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などのパッケージ型サービスが重視され、単体の訪問介護では20分未満の身体介護への移行が進み、生活援助が要介護2まで自費にする案が出されている。

 通所介護は報酬の大幅ダウンに加え、16年度から定員18人以下の小規模デイサービスが地域密着型に移行した。政策金融公庫はこの在宅を支えてきた2つのサービスが、ともに15年10月段階で事業所の4割が赤字であるとの結果を発表した。反対にパッケージ型サービスは「医療介護総合確保基金」により開設の補助金が出され、第6期介護保険事業計画では市町村に公募をさせる誘導策が取られている。

 しかし、これらの誘導が入院抑制や介護給付削減に結びついているかは疑問である。要介護度別の限度額に対する、看護小規模多機能の平均利用金額は、要介護2と3では限度額を上回っているのである(グラフ)。

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 退院時に集中的にサービスが必要な場合や、医療ニーズが高い場合には活用効果があると考えるが、ターミナル期ではショートステイ自体が通常は困難になり、100歳以上の死因のトップは老衰であることを見ると、目的にあわせて活用するサービスの1つとして見ることが妥当であろう。単体のサービスを状況やニーズにあわせて活用することの方が、費用負担や使い勝手が良い場合が多いと考える。

 また、16年の補正予算でサービス付き高齢者向け住宅に、小規模多機能や看護小規模多機能を併設すると「拠点型小規模多機能」として補助金を増やしているが、これも疑問である。自宅があり、家賃がかからず、近隣とのつながりがある自宅から、高齢になり移り住むことが、施設削減に繋がるかは疑問である。ちなみに、厚労省の勧めている「柏モデル」では施設削減に結びついていないのである。まして家賃が高いからと地方のサ高住を受け皿にするのは、どこが「住み慣れた地域」なのか疑問である。

 多様なニーズに、多様なサービスの選択肢を組み合わせることが重要であろう。それを進めるケアマネジャーの排除は、介護保険の根幹を危うくすると考える。

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