ケアマネジャーはじめ介護・医療に携わる皆さまへ様々な最新
情報を深く分かりやすくお伝えする「シルバー産業新聞」です。

Care-new.jp

大中小 テキストサイズ変更RSS

シルバー産業新聞

介護保険と在宅介護のゆくえ
介護保険と在宅介護のゆくえ582017年2月 3日07時00分

日本ケアマネジメント学会 理事

服部万里子

ジワジワ負担増に泣くのは弱いものばかり

 2018年の介護保険制度改正案の検討では、福祉用具や住宅改修、生活援助の個別サービスの自己負担導入などが、利用者へ動揺を与えた。その反応は大きく、「自費で払えなければ重度化する」「家族に頼むしかない」など、介護の社会化とは逆行する利用者の意向調査データが出され、上記改正案はトーンダウンし「条件付きのサービス継続」になった。

 しかし、17年度から高額療養費の見直しや、高額介護サービス費の見直しで自己負担の増加と合わせて、ジワジワと負担増が年金受給の高齢者の財布を直撃する。物価が上がっても一般世帯の賃金が下がれば、「年金額も減らされる」という年金制度改正も可決した。

 また次々回の介護報酬改定に向け、19年度末をめどに、軽度者向けの生活援助サービス見直しも予定される。

1.さらなる負担増の論議に注目

 今後、17年度末には「紹介状なしの大病院受診に5,000円以上の定額負担導入」、18年度末にはかかりつけ医以外に受診した際の、自己負担に定額負担を追加するか否かが検討課題として審議される。また、預金通帳やタンス預金などの申告を伴う金融資産に応じた、医療費自己負担の是非もこれから論議がされる。預貯金は将来の生活の不安があるから、なけなしのお金から何十年もかけて積み立てるのであり、本当にゆとりがある人はほんの一握りである。

2.公的介護保険の縮小で民間介護保険へ移行させるのか

 大企業8社により介護の新会社が設立されたというニュースが飛び交った。これから民間サービスにとってのビジネスチャンスが到来するとの予測である。

 この8社は日本郵便、かんぽ生命、日本IBM、綜合警備保障(ALSOK)、第一生命ホールディングス、電通、セコム、NTTドコモであり、郵便局の職員が自宅を訪問し、買い物を届け、話し相手や体調の情報を医療機関に送り、緊急時はALSOKが対応するなどのサービスを行うもののようだ。

 先日は、「東京都が特区で混合介護解禁!」というチラシが居宅介護支援事業所に配布され、そこには「介護保険と保険外サービスパック」が打ち出されている。サービスの種類が増えることは大切である。しかし、公的介護保険の縮小を見越した民間サービスは、あくまで「購入できる」人が救われるのであり、公的介護保険の役割を代替することはできない。

3.介護人材の拡大は非就労者の介護復帰が先決課題

0103hattori.jpg 介護人材の不足は現場の一大事であり、事業所も利用者も苦しめられている。訪問介護員の養成研修でヘルパー1、2級をこの20年間で取得した人(91年から12年まで)は383万2,214人いる。しかし、ヘルパーとして就労している人は28万6,140人で、実に9割以上の人が訪問介護の仕事に就いていない。

 その理由は、介護労働安定センターの15年の調査によると、「給与が安い」「仕事がきつい」「社会的評価が低い」「休みがとりづらい」などである。個別の自宅を訪問し、相手の心身の状態や生活の個別性に合わせて、決められた時間内に求められた介護サービスを提供することは、「だれでもできる簡単なサービス」ではなく、専門性が不可欠である。個別の訪問介護は短時間で行う観察力や、コミュニケーション力、介護技術や環境への柔軟な適応力などが求められる。その評価を行い、仕事の質に即した報酬が支払われることが人材確保の出発点であろう。

 施設も含め介護福祉士の就労も低い。介護福祉士は140万8,533人が資格を取得している。そのうち、介護の仕事に従事しているのは63万4,175人(12年)である。このような就労率の低さは、報酬面が影響している。

 過去5回の報酬改定で4回もマイナス改定が行われ、訪問介護サービスの単価が下げられたことから、事業所が質に即した給与を支払えない状況がある。結果として「低賃金」が雇用を困難にするという、悪循環が繰り返されている。また、訪問介護員の78・4%が非正規雇用という現実が、「雇用が不安定」という課題に繋がっている。

 介護の質が在宅生活の継続性を高め、悪化を予防し、介護給付を抑えることにつながる。より長く在宅で暮らすために、介護職の量と質の確保は急務の課題であろう。生活支援ほど専門性が問われるサービスはないのである。利用者の力を引き出し、やる気や生きる力を引き出すのは在宅介護であろう。

「介護保険と在宅介護のゆくえ」カテゴリーの最新記事

シルバー産業新聞購読のご案内

発展する「シニアマーケット」の動向など、確かな業界情報はシルバー産業新聞から。

1年間(12回)
7,700円(送料・税込)
2年間(24回)
14,214円(送料・税込)
3年間(36回)
19,545円(送料・税込)

購読、書籍のお申込みはコチラ

  • 福祉住環境コーディネーター検定試験
  • SSL グローバルサインのサイトシール