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介護保険と在宅介護のゆくえ
介護保険と在宅介護のゆくえ532016年9月 7日07時10分

 介護・社会保障の強化は地域経済活性化につながる

1.介護保険部会で要支援~要介護2までの給付抑制論議開始

 参議院選挙が終わると同時に、「経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日閣議決定)」の具体化論議が始まった。要支援~要介護2を介護保険から外し、市町村事業へ移行し、加えて生活援助・福祉用具・住宅改修は自費に変更するための検討である。

2.住宅改修を自費にすれば「保険制度」の意味がない

0803hattori.jpg トイレを和式から洋式に変え、廊下に手すりをつけ、玄関の段差を解消したりすることで、歩行器が使えたり、自分でトイレに行くことができれば自立支援につながり、介護者の負担が減る。それを個人の資産と言い「介護保険から外す」のは介護を知らない人の言い分である。市営住宅やアパートなどの手すりは出る際には原状復帰が求められ、その費用は自費である事実を知っているのであろうか。

3.消費税10%への増税延期を社会保障削減の理由にさせてはならない

 消費税のアップが延期になったことで、社会保障を削るのは「やむを得ない」という意見は妥当ではない。日本企業の業績は回復しているが、人件費には使われていないことが明らかである。

 民間企業の預貯金は09年度203.9兆円で80年以降最高である(日銀賃金循環統計)。また、企業の内部留保は09年度末258.8兆円で前年より増加している(財務省「法人企業統計」)。しかし、平成24年の民間企業の給与支払い総額は191兆996億円で、前年より4兆7,000億円(2.4%)減っているのである。企業は儲けが出ても、次の投資や海外進出に向けているのであり、働く者へ還元されていないのである。

 その結果、日本人の平均給与は正規468万円、非正規は168万円(国税庁民間給与実態統計)。非正規率40.5%と史上最高である。介護保険の委員会が開催された7月20日から小学校は夏休みに入った。給食がなくなると飢える子供が社会問題になっている。子供の6人に1人が貧困なのは戦後70年を経た日本の貧富格差の拡大の結果である。

 保育士が2人目を産めず、300万人いるヘルパー2級が介護の仕事から離れていく、介護労働安定センターの調査では「給与が安い」「仕事がきつい」「社会的評価が低い」が三大原因である。介護保険の利用者は80歳以上が78%である。人生の最後の時の介護に社会保障の充実を図るのは当然である。

4.介護は地場産業、充実させると地域経済は活性化する

 介護職や保育士の給与が日本全体の雇用者の賃金より月に10万円低いのが現実で、人材不足が大企業の海外進出にしか目が向かない、政府の経済政策の誤りの結果生み出されているのである。介護報酬を減額することで給与を抑え、仕事が継続できないようにして、外国人介護研修生を入れようとするなどは、日本の介護職の低賃金を固定することにつながる。介護は地場産業であり、合理化できないものである。3度の食事を一度に食べさせることや、1日7~8回の排泄を一度にさせることはできない(一部の施設で排便を貯めて浣腸でまとめて行うところもあるが)。人間の生きることを支える介護は食事介助も排泄も着替えも個別性、個人差が当然である。

 介護職は遠方から交通費をかけても在宅にいる時間しか報酬にならないため、通常は地場で募集する。その人たちの給与を上げ、雇用を安定させると、介護職自身が地域の消費者となり、食費や衣服や家電製品に、子育てや教育に生活費を使うので、地場産業が活性化する本来の姿を取り戻すのである。 現在社会保障の5割は年金、3割は医療、2割が福祉で生活保護や児童福祉・障害者福祉・介護である。年金の4兆円が国の年金積立金管理運用独立行政法人の株式投資の失敗で損失した。このように企業の株式に投資するリスクを「儲かる時もある」と主張するのも間違いである。日本以外の国ではリスクある株式投資の割合を抑えているのは、「年金」という老後資金を安定的に確保するためである。企業の海外進出のための投資にしてはいけないと思う。介護への投資は地場産業の育成であり、子育て、介護者の離職防止に直結するのである。

日本ケアマネジメント学会 理事

服部万里子

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