連載《プリズム》

効率のよい福祉用具と生活援助

効率のよい福祉用具と生活援助

 行政は、国民の利益に関わる事業を縮小するときは、きまって、反対の少ないところから手を付ける。目立って、表だった反対が出ないように、だ。(プリズム2016年4月)

 18年改正では、軽度者の生活援助と福祉用具貸与をやり玉に上げた。「介護保険は、介護の保険であって、生活(援助)を給付の対象にしない」という主張が、あらためて掲げられた。福祉用具も「生活で通常使うもの」として、原則自費にすべきと提言された。だが、介護保険の範囲から生活をすっかり外しては、地域包括ケアがめざす「住み慣れた在宅や地域で住み続けるため」という目標も雲散霧消してしまう。

 我々が福祉用具の有用性を主張すると、財務省は「私たちは決して福祉用具が大事でないとは言っていない。財政が厳しいからだ」と理由を述べる。これに対して「厳しい財政だからこそ、費用対効果の高い福祉用具を活用すべきではないか」と応えると、「ムダな用具が給付されている」と、論点がすり替わる。

 財務省は、同じ機種のレンタル価格が10倍も差があることが調査で判明したと、財政制度等審議会などで報告した。レンタル価格は相場が形成されており、極端な価格設定は通常まずない。ケアマネジャーがよく知っている。日本福祉用具供給協会は、問題のある個別事例こそチェックされるべきであって、きわめて例外的な事例を根拠にして福祉用具全体の給付抑制を行うのは間違っているとし、給付が適正であるかどうかは、福祉用具専門相談員の福祉用具サービス計画書を精査すべきだと強く反論する。

 新年度から介護ロボットの「自動制御機能付き歩行器」が給付対象になった。新たに介護ロボットを給付対象に加える足元で、政府は、191万人が利用する福祉用具レンタルには原則自費を提起する。あるいは、政府は一億総活躍、介護離職ゼロを高らかに掲げながら、軽度者のすべての介護保険サービスの給付抑制を提言する。この事態、中国の故事にならえば、朝三暮四。エサの量が少ないと起こったサルに、飼い主は朝夕のエサの量を逆にしたところ、サルは納得したという喩え。日本国民はサルではない。利用者や家族ら11万人、ケアマネジャー5万人の反対署名が集まっている。

(シルバー産業新聞2016年4月10日号)

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