未来のケアマネジャー

ケアマネジメントとは何か?2024年はチャレンジの年 石山麗子

ケアマネジメントとは何か?2024年はチャレンジの年 石山麗子

 3年に一度の介護保険制度改正の具体的内容がかたまりつつある。去る12月19日に2024年度介護報酬改定に関する審議報告が公表された。今月は報酬案が示される。昨年6月に公布された改正法と審議報告を確認し、筆者が感じ取ったのは、今回は難しい舵取りを要求された制度改正であったということである。

 理由は状況変化の速さである。介護保険制度の改正は3年1クールだ。改正のプロセスは、施行から2年目に法改正事項が、3年目に報酬改定事項が議論されるので、実質2年かけて改正を完結させる。
 法改正事項と、12月に公表された報酬改定の審議報告を見比べた。そこから見えてきたのは、社会状況の変化と時間の流れである。制度施行以来、これほどまでの速度で社会が変化したことはなかった。2年かけて改正作業をしているうちに、また変化が起きている。だから、せっかく議論しても、現状にそぐわない状況すら起きている。誰が悪いわけではない。それが事実なのだ。

 変化とは、急激な物価上昇や、不足の域を超えた危機的な人材不足である。地域包括支援センターの業務負担や人材不足の解決策の一つとして、居宅介護支援事業所に指定介護予防支援事業所の指定申請が可能となった。とはいえ、この1年のうちに居宅介護支援事業所のケアマネジャー不足も全国的に顕在化した。本業である要介護者の受入れに頭をかかえている状況で、どれだけこの改正に有効性があるのかの判断は未来にしかできない。

 人材不足とはいえ、その範囲は拡大している。人材不足といえば、かつては直接介護する介護職を指していた。昨今、不足の範囲は相談援助職に至り、事態はすでに深刻化している。なぜなら、介護を受ける前提の相談支援が受けられないからだ。結果として、地域包括には受入れ先の居宅介護支援事業所を探すという一層の手間がかかっている。利用者にとっては、被保険者として相談をしたり、サービスを利用しなければならない状況があるのに、その権利を円滑に行使できない状況が生じつつある。

 とはいえ人材不足、財政難のなかで打つ手は限られていたのだろう。人員配置基準と相談の実行方法が改定された。単に報酬上の1人あたり介護支援専門員に対する給付管理件数の改定にとどまらず、厚生労働省令である基準上の人員配置基準が35件から44件に改定された。要支援のカウントは3分の1である。これらはすべての居宅介護支援事業所が適用対象となるものであり、過去の改正主旨の経緯からみても極めて重い。また、質を担保したケアマネジメントの実行、介護支援専門員の業務負担、ワークライフバランスという観点からみれば今後課題が生じる恐れがある。想定されることへの事前対策と検証は必要だ。

 これまでより9件多い業務を行うなら、従前の35件を上限とした職場環境と業務プロセスで実現できるか検証が必要だ。労使の話し合いは必要だろう。そうでなければ、他の働き方を求めてケアマネジャーが転職を続け、一層、人材不足感は増加する。
もう一つ必ず守らなければならないものがある。ケアマネジメントのベースはコミュニケーションだ。近年推し進められている意思決定支援は、効率化とは逆のベクトルである。しかも、ご自身で意思表出できない方も増え、ケースの様相も複雑化している。書類を整え、プロセスをまわすことだけで仕事が完結するのではない。
ケアマネジメントとは何か、これからのケアマネジメントをどう実行するのか。2024年は、新たに課された問いへの答えと、具体的な実行方法を模索していくチャレンジの年になりそうだ。

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル